西陣織とは
唐織(からおり)
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元来は、中国から渡来した織物です。だから唐織だったようですが、平安時代あたりから唐衣に用いられ、その技法が日本で進化し、主に能装束などに使われる生地として西陣で発展した織物です。
西陣織の紋織物の多くは緯糸(よこいと)で柄を作ります。また、地組織を作る為の緯糸を地緯(じぬき)、柄を織り成すための糸を絵緯(えぬき)と呼び、地緯と絵緯は別の性質の糸を使います。性質は違いますが、もちろん経糸(たていと)、地緯、絵緯すべて絹です。
唐織は、経糸と地緯で三枚綾組織(図1)を織り、その上に絵緯を使った二重織りで生地を覆い隠すように柄を織ります。絵緯は地緯の何倍も太い撚りの少ない糸を使います。太い糸を使うとまるでエンボスでもかけた様なボリューム感のある刺繍のような文様が織り成せます。また撚りが少ない糸で文様を織ると、文様部分に絹ならではの光沢が撚りをかけた糸を使った場合よりも良く出ます。
絵緯は、細かく経糸と組織させずに通常よりも長い間隔で組織させて生地に織り上げます。そうする事で唐織独特のふんわりしたボリュームのある文様になります。長い間隔の絵緯を密度の高い生地でしっかり止める為に地緯を濡らして織る『濡れ緯(ぬれぬき)』と呼ばれる技法を使います。地緯を濡らして織ると密度が上がる理由としてイメージしやすいのは、針の孔に糸を通すとき糸の先を少しなめて濡らしますよね?糸を濡らすと糸にある毛羽が濡れて糸全体が細くまとまります。これと同じで、濡れて細くまとまった地緯でしっかりと織り、それが乾くと地緯は元の太さに戻る。だから生地の目が詰まります。さらに水の表面張力で、打ち込んだ地緯同士がくっつき合います。このため濡れ緯を使った生地組織は密度が高く、整地感のある生地になります。
唐織は、ボリュームのある文様部分に目が行きがちですが、この整地感のある生地が更にそのボリューム感を引き立てます。西陣織ならではの工夫の詰まった高い技術を要する織物が唐織です。
(図1)三枚綾組織
オレンジが経糸、水色が緯糸をそれぞれ表しています。
生地の表情が斜めに出ているグレーの部分が生地です。
柄部分が生地より盛り上がって織られているのが分かります。