西陣織とは
手機と力織機
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西陣織の織物において手織りと動力織りの違いについて、手織りが高級品で動力織りが普及品程度に思っておられる方が多いのではないかと思います。
西陣では、手織りの織機の事を「手機(てばた)」、動力織りの織機の事を「力織機(りきしょっき)」と言います。
織物を織っている工場をご覧になった事のある方はご存知かもしれませんが、力織機は全自動で機械が全て生産してくれる自動電子織機とは違います。
実は、手機と力織機、織機のパーツや機能など重要な部分は殆ど同じものです。
ちなみに織機は主に5つの運動を行います。
織機に張った経糸を引き上げて緯糸を通すための隙間を作る「開口」運動
経糸を引き上げてできた隙間に緯糸を通す「緯入れ」運動
その通した緯糸を手前に打ち込んで揃える「筬(おさ)打ち」運動
そうして出来た生地を巻き取る「巻き取り」運動
それと同時に巻き取った分の経糸を送り出す「送り出し」運動
この5つの運動をする機械が織機です。
簡単に言ってしまうと手機と力織機の違いはこの5つの運動を人力で行うか動力を利用するかにあります。
これだけを聞くと、違いがそれだけなら全部力織機にすれば楽が出来るし良いじゃないかと思う方もあるかも知れません。しかし当然ですが、手機と力織機にはメリットとデメリットがそれぞれにあります。
ではまずメリットから
<手機>
手織りならではの「良い風合い」が出せる。
緯糸の「色数に制限がない」。
力織機では出来ない「複雑な生地組織」が織れる。
<力織機>
手機より早く織れる「生産性が良い」。
同じ力で織り続けるので「均一な織上り」に出来る。
デメリット
<手機>
なかなか仕上がらない「生産性が悪い」。
複雑な組織が織れますが、それを出来る「職人が少ない」。
<力織機>
緯糸に使える「色数に制限がある」。
裏にたくさん糸が渡ってしまうので「仕上がりが重くなる」。
などなど。他にもメリットデメリットはありますが、主にはこんな感じかと思います。
ここまで書くとお気付きの方もあるかも知れませんが、冒頭に書いた「手織りが高級品で動力織りが普及品」という認識は、実は一概にそうとは言えません。実際、力織機でも高級な織物はたくさん織られています。
同じ織物を手機と力織機で織れば、それは手機の方が時間も手間もかかるので価格は高くなります。しかし品質はどうかというと、職人の力量にもよりますが、無地の整地感は力織機の方が良いし、風合いは手機の方が良い物になるでしょう。
私の主観的な考えではありますが、力織機で織れる物を手機で織るのはいかがなものかと思います。ただ価格が上がるだけで使う人の事を考えていないのではないかと。
結論、手機か力織機かという事で織物の良し悪しは決まらないという事です。
画像で比較
手機
力織機
この画角で見るとほとんど同じであることが分かります。
丸で囲んだ部分にある杼箱という装置が力織機には付いています。ここに杼を入れておくのですが、この数で使える色数が決まります。
織機の上には、(左)手機、(右)力織機とも同じようにジャカードという装置が設置されています。
この装置によって様々な文様や生地組織が織れるように経糸を引き上げます。
こういうのとは違うのです。(自動電子織機が悪いという事ではありません。これはこれで、速く織る、人の手がかからない、品質が揃う等、良い部分がたくさんある織機ですので、誤解の無いように!)